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2007/08 宮古弁語呂合わせでスムーズな会話を

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 宮古弁にだけあるというわけではないが、共通語はもちろん、どの地方にも会話の調子をスムーズにするための語呂合わせ的物言いがある。語呂合わせで「コッツ/こっち・自分」の知性というか物知りぶりを「ズマンペ/自慢・知ったかぶり」して、加えて話の内容をわかりやすく潤滑にしながら、かつ、重要頻度性を加えたり軽減させたりするわけだ。今月はそんな語呂合わせ的宮古弁を探してみようと思う。

ナンダリカンダリ

 なんでもかんでもという意味で「ナンダリカンダリ、アッテバ/なんでもかんでもあるよ」とか「ナンダリカンダリ、オモゼンセ/何でもいいから、お持ち下さい」、「ナンダリカンダリ、サベッテダッケー/あること無いこと好き勝手に言っていた」というように使われる。前半の「ナンダリ」は何でもという意味で「カンダリ」は「かんでも」を「ナンダリ」に似せた語呂合わせ用の造語だ。

イズダリカズダリ

 いつでも時なしに、時間の見境なくという意味。「イズダリカズダリ、キテケツカル/時間を考えないで来やがる」「イズダリカズダリ、イットガン/あなたの好きな時間に出かけてください」などがある。似た表現に「イズガカズガ」「イッツモカッツモ」などがあり、前者は「イヅカカヅガ、ヤットグッケ/いつかそのうちにやっておきます」という不可解な未来完了を、後者は「イッツモカッツモ、オモッサゲネー/いつもいつも申し訳ない」というような意味だ。もちろん「…カズガ」も「…カッツモ」も語呂合わせ用の造語だ。

ガニモゴモモ

 必要なものもいらない物もひっくるめてという意味。「ガニモゴモモ、ブンナゲデケロ/選別しなくてもいいから全部捨ててくれ」というように使われる。前半の「ガニ」はもちろん食用にもなる「カニ」で必要な物という意味。後半の「ゴモ」は「ごみ」を表す。必要な物も不必要な物も選別が「ザッツェー/面倒くさい」になっている状態でこらを全部ひっくるめてという表現だ。また「ゴモ」は干した海草で編んだ「ゴモメーカゲ/ごも前掛け」という漁師用の前掛け(浦島太郎の前掛け)もあるが、ここでは「ごみ」を意味する「ゴミゴンドー」の「ゴンドー」が「ゴモ」に置き換えられている。また、同じ表現で「ガニゴモ」と短縮して使う場合もある。

イッツェーカッツェー

 思ったよりたいしたことない、見かけ倒し、不甲斐ない、役立たずという意味。「イッツェーカッツェーナーヤヅダ/たいしたことないヤツだ」という風に使う。「イッツェー」は共通語だと「一切」という意味で、「一切合切」という語呂合わせでも使われているが宮古弁の「イッツェー」とは意味が違っている。ちなみに後半の「カッツェー」は「カッツァグ/引っ掻く」「カッツァ/外皮(クリカッツァなど)」の言葉の調子をを引用した語呂合わせ用の造語だ。また「イッツェー」を単独で使う場合も多く、その場合は落胆の「ツァ」先頭にして「ツァ、イッツェー、ダーナー/ちぇ、たいしたことないな」というふうに使われる。

イデーカリー

 直接の意味は痛い、痒い。だが、ここでは何かと身体が不調な様子として使われる。「イデーカリーベーリステ/あれこれ病気ばかりして」とか「ハー、イデーカリーバ、スッタグネー/もうあちこち病気はしたくない」というように使う。高齢化社会になっている宮古では会話の中で頻繁に使われる語呂合わせ宮古弁だ。

エーソモコソモ

 愛想も何も、全て。という意味で、大概の場合「エーソモコソモ、ツギダー/愛想も何も全て尽きた」というパターンで使われることが多い。会話的に装飾するならば前半に「アリヤッターイェー/あらいやだわ(女言葉)」「ヒトーバガニスター/人をバカにして」を加え「オラーハー/あたしはもう」「エーソモコソモツギダー」とまとめるとよい。「エーソ」はもちろん「愛想」で「コソ」は語呂合わせ用の造語だ。あたしはもう愛想笑いする気持ちもありませんよ…という意味。人間関係に落胆したり失望した時に女性言葉として頻繁に使われる。

イーモネーモ

 もちろん、オッケー。文句はないよという意味。「イーモネーモ、オデンセ/いつでも歓迎ですよ、いらっしゃい」「イーモネーモ、ヤツケドガンセ/遠慮はいらない、グッと飲んで(酒)ください」という感じで使われる。「イーモ」は「良い」という意味で含みの中に「良いも悪いも」という暫定があり、「ネーモ」は「ない」という意味だが「イーモ」に合わせて「ネーモ」と「ー」を加えて語呂合わせにしている。

ナンボーソーレナンボー

 お値段はいくらですか?あなたの言い値でどうぞ。というような意味。昔、リヤカーを引いて行商にくる「オッパヤンガ/おばちゃんが」、売れ残った品物を捨て値で捌く時に言っていた特殊な行商取り引き言葉。「ナンボーソーレナンボーダードモ、□□デイイケェ/本来は○○円なんだけれど、□□円でいいですよ」という意味。商売とは関係ないが似たパターンに「ナンボーナンダーテ/いくらなんでも」とか「ナンタラカンタラ/何だかんだ」などがある。

ネンバラクンバラ

 ねちっこく、しつこい性格のこと。「ネンバラクンバラッテ、ヤンターヤヅダーモンネ/ねちっこくていやなタイプだものね」「ネンバラ」は「ネッパル/粘る」を特殊変化させた「ネッパラガス/粘らせる」に、語呂合わせ用の造語の「クッパラ」を付け足し「クンバラ」に短縮したもの。使われる地域は限られていてあまり耳にすることはない。

懐かしい宮古風俗辞典

【ぼんぱす】

 お盆の墓参りの際に供物に併せて備える仏様用の専用箸。柳の小枝を切って皮を剥いた物が使われる。魚菜市場の盆市などで入手可能。

 お盆は明治の新暦導入後も根強く残った日本国民の祖霊感を残す代表的行事だ。いくら明治政府でもこの世の都合のみで、仏様の暦までは変更できなかったわけだ。そんなわけで今でも8月のお盆を「旧盆」と呼ぶわけで、古いという意味ではなく、旧暦で行われるという意味だ。そんなお盆行事には色々な決まりやしきたりがあり、それは宮古だけでも各地区で色々と変化がある。近年はかなり省略されているが地域の特色として覚えておいて損はない。そんな中で仏様の供物に添える箸がある。これを「ボンパス/盆箸」といい皮を剥いた柳の小枝が使われる。昔はこれを各家で作ったが近年はこの時期だけ販売されている。これは柳を33年で切り倒しその木で三十三回忌の卒塔婆を作るという言い伝えがあり、これが柳があの世に通じる霊的な木という証だ。また、気仙地方では柳の枝の又に真綿のこよりをつないで死者の口寄せもするという。そんなわけで死者とオバケには柳がつきもので仏様用の箸も柳なのである。  面倒だから割り箸で失礼…という「セッコギ/怠け者」ではきっと仏も満足しません。ちなみに仏壇に飾る栗の葉は、栗という漢字が「西」と「木」なので阿弥陀様のいる西方浄土の樹木として飾られるわけです。

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